Behind the Story

12/27/2021
PUYO PUYO TETRIS
:: ぷよぷよテトリス
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  • kazu
  • 無駄に終わらせたくない。何もしないままでは何か納得行かないなあって
  • // Chapter 1
  • 小学校へのグループ登校。先輩が何やら楽しげに話していた。どうやら「ぷよぷよ」というゲームについてらしい。気になって自分も遊んでみたいと思った。それが小学二年生のkazuと「ぷよぷよ」の出会いだった。

    「テトリスやる前、2年くらい熱中してました」
    対戦テトリス屈指の実力者であるkazuであるが、始めは「ぷよぷよ」からスタートした。CPU相手に自己流で何となく連鎖を組んで楽しむ毎日。後に「かえる積み」と呼ばれるやり方だと知るその積み方は、初心者のやる運任せのやり方ではあったが「ただ連鎖で消しているのが気持ち良かった」。最初はただそれだけだった。

    しばらくして「レッスンモード」にあるお題を遊んでみると「組み方が色々ある」ことに気が付いた。合理的な考えに基づいた「ぷよぷよ」のメソッド。「ぷよぷよ」や「テトリス」といった落ち物パズルゲームにある道理や基本に触れることで一気に面白さが倍増した。独学で基本を学び自分なりの工夫を加えていく日々。そんなkazuが間を置かずオンライン対戦に踏み込むことになったのは自然の成り行きだろう。
    「一応、対戦は出来る程度の腕にはなっていた」というkazu。CPU戦にはなかった駆け引きは新鮮で「相手が人だから駆け引きがある」ことが無性に楽しかった。

    「これは相手が連鎖撃ってくるからこうしよう、みたいなことを考えるのが楽しかったです。そこらへんで(対戦の面白さが)芽生えてきたのかなって」
    一人で黙々と学んだ基本のメソッド。その意味や理由が対人戦をこなすことでより鮮明になっていった。
  • // Chapter 2
  • 「正直に話すとぷよぷよが圧倒的に不利だったんです。もうテトリス使うしかないなって思って。そこでテトリスの楽しさに気づきましたね」

    小学校4年生になって「ぷよぷよテトリス」通称「ぷよテト」がニンテンドー3DSで発売された。落ちものパズルというジャンルにおける二大タイトルである「ぷよぷよ」と「テトリス」。これらを対戦形式で競わせるという内容のゲームであり、一種の異種格闘技戦といっても良いだろう。
    当然kazuは慣れ親しんだ「ぷよぷよ」で対戦するのだが「テトリス」勢相手にどうにも歯が立たない。納得が行かなかった。「存在は知っていたけどやろうとまでは思わない」。それがkazuにとっての「テトリス」だったが、何よりも「負けるのは嫌」だった。
    「腹立つなあって。ちょっとそういう気持ちでした(笑)」

    「『テトリス』を相手に対戦していたので基本的な組み方自体は知っていました。相手がやってたそれを見様見真似でやって。リプレイを見てどうすれば良かったかなあって。だからそういう感じでわりと早く馴染めましたね」
    リプレイ機能を使って自分と相手のプレイを独学で検証する。未経験であることの「壁は感じなかった」。自らの力で考えて課題を乗り越える楽しみと喜び。この時のkazuは既にそれを身に付けていたといえる。2年余りを費やした「ぷよぷよ」における試行錯誤の経験は「テトリス」に引き継がれることとなった。

    「やれる時はもうずーっとやってましたね。多い時は八時間とかやってたと思います」
    学校が終わって帰宅するとすぐに「ぷよぷよテトリス」に取りかかる。夜の食事を終えて学校の課題を終わらせると、そこからは寝るまでノンストップで遊んだ。
    「強い人がいる時はずっとやってましたね。勝てない人が結構いたんですけど全部名前覚えてて。誰かいるなーって思ったらずっとやってましたね」
    勝てない相手を見かけるとひたすら対戦を申し込む。相手が付き合ってくれる限りはやり続けた。そうやって量こなすことで現在に至る「テトリス」の土台を築いていった。
  • // Chapter 3
  • 寝る間も惜しんで遊んでいた「ぷよぷよテトリス」をkazuが全く遊ばなくなった時期がある。他のゲームに興味が移ったのだ。
    「Splatoon(スプラトゥーン)」。高い戦略性と斬新なビジュアルを持つこのタイトルにkazuは夢中になった。練り込まれたゲームシステム、24時間対戦相手に事欠かない環境。慣れ親しんだ「テトリス」や「ぷよぷよ」とは異なりチームで対戦するという点も彼にとっては目新しかった。一つのことに熱中する性格も手伝って「ぷよぷよテトリス」に注ぎ込んでいた膨大なリソースはそのまま「Splatoon」にシフト。それを約2年間ひたすらやり続けた。

    「テトリス」の世界に再び戻ったきっかけは中学生になって発売されたSwitch版「ぷよぷよテトリスS」だった。
    「めっちゃ変わりましたね。ラグが無くなったんですよ。かなり軽減されてましたね。なので楽しかったです。ずっとやってました、また」

    以前に遊んでいた3DS版「ぷよぷよテトリス」のオンライン対戦では通信ラグによる遅延があった。Switch版はゲームの内容そのものが大きく変わった訳ではない。しかしkazuにとってそれは全く別のゲームというくらい新鮮なものだった。レスポンスの向上により思った通りの操作が決まる。身体につけていた重りを外したような感覚があった。

    以前の3DS版においてラグが原因で負けた時は「正直キレていた」とkazuは語る。オンライン対戦における遅延による理不尽。「ぷよぷよテトリス」プレイヤーであれば多かれ少なかれ「みんな経験してる」ことだという。
    「全然違ってた。それまで勝てなかった人にも勝てるし楽しかったですね」
    勝敗における納得が以前と比較にならない。あれほど遊んでいた「Splatoon」はすっぱりと止めた。チーム戦は面白かったが「やっぱり自分は一人の方が合ってる」とあらためて感じたのだ。
    「『Splatoon』でメンバーがやらかすとイラッときていたりもしたので(笑)」

    「獣道4」での対決はインターネット通信を介在しないオフラインで行われる。通信ラグの解消で「ぷよぷよテトリス」に舞い戻ったkazuではあるが、ラグの存在しないオフライン対戦を「やったことはほとんどない」。オフライン大会経験の少なさがその原因だ。そこに不安はないのだろうか?
    「まあ正直言ってオフラインだからといって弱くなるみたいなことはないですね。むしろ強くなると思います」
    迷うことなくきっぱりと言い切るkazu。光速の頭脳戦は望むところといった感じだ。
  • // Chapter 4
  • Switch版「ぷよテトS」において絶対無敗のキングとして当時君臨していたのが「あめみやたいよう」だった。

    「たぶん中2の頃なんですけど、あめみやさんと対戦出来たんですよ。野良で」
    たまたまマッチングした「あめみやたいよう」に「レート戦」で勝利した。
    「ランクみたいなのがあるんですけど、あめみやさんのランクを一つ落としたんです。オレツエーってなりましたね、その時は(笑)」
    実力も知名度も最高の「あめみやたいよう」に勝てたことで「自信が付いた」が、実力には圧倒的な差があった。
    「その時は調子が良かったのかなあって。偶然だったと思います」

    「ぷよテト」における互いの実力をはかる方法は「連戦」と呼ばれる長期戦である。識者の意見を総合すると「30試合~50試合の先取」がその基準であり、「レート戦」でたまたま数回の勝負を制したところで本当の実力は分からない。「オレツエー」と無邪気に喜びはしたものの、そこはkazuも理解していた。
    「ただ、それがきっかけになって、あめみやさんと連戦が出来るようになった」
    「それまで無名だった僕」をあめみやが覚えてくれるきっかけになった。それが「分岐点」になった。

    「いやもう負けてしかなかったですね、全部負けてました」
    50試合先取の連戦であめみやたいように挑み続けたが「負けまくってた」という。
    「あめみやさんが50試合先取で勝って僕はいつも30試合後半くらいだった。接戦にもならない。たぶん50連敗くらいしたと思います」
    圧倒的な実力差を見せつけられたが「楽しかった」。
    「僕のその頃の実力は全二(全国二位)って呼ばれてましたね。一位はあめみやさんです。無敵でした。勝てる人はいなかったです。いつかは勝ちたいなと思いながらやってました」
    「テトリス神」とも称されるあめみや。その背中は遠いものだった。

    「中3の時にはじめて勝つことが出来たんですよね。嬉しかったです。あめみやさんは何年も無敗だった。それを最初に崩せたことが嬉しかった」
    連戦という対戦プレイヤーにとっての「正式な対戦」で負けたことがない存在。その絶対王者に土を付けたのがkazuだった。勝てるようになったきっかけは「間が空いた」こと。学業のこともあり、さすがのkazuも対戦ばかりしている訳には行かない時期があった。

    「けっこうあめみやさんと対戦する間隔が空いたんですよ。対戦しないで練習していたら勝てたっていう」
    勝てない相手と距離を置くことで整理が出来たということだろうか。
    「そういのはちょっとあったと思います。多分そこからは僕が勝つのが普通になっていったような。一回り大きくなったと言うか。そういう感じで勝てたんじゃないかなーって思ってます」

    「間が空いた」ことが勝利のきっかけとなった。kazuに起こったその現象は格闘ゲームにおいても珍しくないとウメハラは語る。
    ウメハラ「そういうのは散々見てきましたね。やったしやられたし。経験ではっきりそうなんだけど、最初は五分でもずっと繰り返してるとやがては自分が勝つ。同じ相手に一週間、一ヶ月、一年ってずっと勝ち続けてる。そういうことが格ゲーやってると起きてた。麻雀は逆だった。師匠とやるとずっと勝てない。癖も含めて感覚でこっちを掴まれちゃってる。こうしたらこう動くとかね。自分より弱い相手と打ち続けると自分でもそうなる。経験で知ってたけど麻雀でもそれが出来るとは思わなかった。あんな運の強いゲームでもそうなるんですよ」

    これは相対的な差があれば、どんなレベル帯においても起こる現象だという。
    ウメハラ「レベルの差はあれみんな共感できる話じゃないかな。……持論なんだけど勝負事ってちょっと強い相手が結局飲み込んでっちゃう。癖とかを実力が上の側が把握しちゃう。kazuがやればやるほど、強い方のあめみやが掌握して実力以上に負ける」
    気性や心理的傾向を全人格的に掴まれてしまう。そうなれば勝てないのは道理だろう。事実あめみやは土を付けられるまで「一生オレが勝ってました」というくらいの勢いで勝ったと語っていた。そういう状況に追い込まれた側はどうすれば良いのだろうか?
    ウメハラ「一番いいのは一回そいつとやるのを止める。最も簡単な解決法(笑)」
    努力を続けても超えられない時は距離を置くのも一つの方法だ。押しても駄目なら引いてみな。こういった心がけはウメハラが長くトッププロでいるための秘訣の一つなのかもしれない。
  • // Chapter 5
  • 「あめみやさんは立ち回りで勝つタイプですね。地力は僕より低いと思います。ただちゃんと相手の嫌がることをするというか。隙を突いて火力を溜め込むとか一気に吐き出すとかそういう部分。穴バラ(*1)っていうのがあるんですけどこれ相手の嫌がることなんですね。それを効率的に送るように高い意識を持ってます。だからまあ、やりづらい相手だとは感じますね」
    丁寧に守りつつ相手の隙を見逃さない。守備型、対応型のスタイルで戦うのがあめみやたいよう。対してkazuは自身のスタイルを攻撃型だと語る。
    「僕は相手のプレイとか関係なく力で押すタイプなので。シンプルな強さと言うか。火力を送りまくって相手の場をキツくさせてそのまま押し切るみたいな。見ていて分かりやすい強さなんじゃないかと思います。立ち回りなんかも自分なりに工夫はしてますけど、顕著じゃないから分かりづらいかな」
    *1 穴バラ:ランダムにバラけさせた状態で相手にミノ(ブロック)を送り込む方法。送られた側は対処が難しくなる。

    上級者同士であっても正解はそれぞれ異なる。得意とする技術や性格によってもそれは変わるだろう。ネット上に残る近年の戦績に限って言えばkazuの方が押している。だが勝負は勝負。決戦当日にガラリと戦法も変えてくる可能性もある。こればかりは本人も「やってみないと分からない」という。
    「行けそうな相手だなと思って戦ってみると意外にそうでもない。逆のこともある。これは『テトリスあるある』なんです。実際やってみないと分からない。あめみやさんはRENが強みですけど他の部分も高くなってる」
    そう言いつつもkazu本人の実感としては「自分の方が強い」。そこに強がるようなニュアンスはなく、それ相応の自信が見て取れる。

    kazuとあめみや。近年は巡り合わせもあって二人が連戦をする機会もなくなってしまっている。そして過去に「間が空いた」ことで勝つきっかけを得たkazuが、今度は逆の立場にならないとも限らない。なにせ相手は百戦錬磨の「テトリス神」だ。師走も半ば、あらためて自信の程を尋ねてみた。

    「この時のために相当仕上げてきた自信があるんで。もうこれ以上はないんじゃないかな、くらいには仕上がってます」
    本番も近付きプレッシャーや不安を感じているのではないか。そんな少々意地の悪い期待は肩透かしを食らってしまった。
    「……おそらく(今の)僕は『ぷよぷよテトリス』で一番強いです」

    kazuは実力トップクラスを自認しつつも、それまでの取材で「自分が一番強い」とは決して口にしなかった。むしろ、どこかそのフレーズを避けていた節さえある。その彼がそれを口にした。この意味は決して軽くない。「獣道」という戦場が彼のリミッターを外した可能性がある。
    一方、大舞台で結果を残し続けてきた「テトリス神」あめみやも「ガチガチに仕上げて行きますよ」と自信を覗かせていた。一発勝負の大舞台における経験は圧倒的であり、この点は間違いなくあめみやが有利だろう。二匹の獣の正面衝突、乞うご期待といったところだ。
  • // Chapter 6
  • 「獣道4」への参戦を迷わずに受諾したkazu。「そういう場には積極的に出たい」と十代の彼は語る。それは有名になりたい、知られたいということなのだろうか?
    「いや、そうじゃないんですよね。ただ単に(大会等で)優勝したいだけで」
    大会に勝つことで強さを証明したい。そういうことかと思いきや「自己満足したいだけなんです」という返事が帰ってきた。
    「勝って、優勝して『テトリスやってて良かったなあ』って思いたいだけです」
    プロになりたい訳でも、お金を儲けたい訳でも、有名になりたい訳でもない。それらを否定する気はないが、彼にとってどれも少し異なるのだという。

    「……ていうか自分がテトリスに注いできた時間を、有効活用したいというか。無駄に終わらせたくない。何もしないままでは何か納得行かないなあって、自分で。何でやってきたんだろうってなっちゃうので…それをねえ、何とかして軽減させたいというか」
    ― 何らかの落とし前はつけたいみたいな?
    「そんな感じです。失ったものがデカイので(笑)」
    ― 失ったって、どんな?
    「もっと普通に…生きたかったなあ、って(笑) 僕多分、普通じゃないと思うんですよ。なので普通に生きたかったなあっていう…のがあるんで。何とかしてテトリスをやってきた、その時間を、正当化させたいというか」
    ― 意味を持たせたいと?
    「はい。そういうちょっと…不純な理由ですけど」
    ― どうしたらいいのか分からない?
    「まあそんな感じかもしれません。メチャクチャに費やしちゃってるので、僕に関しては(笑) (テトリスが)楽しいから仕方ないけど……」
    ― これだけやって来たっていうことなんですね?
    「そうですね、いや、これだけしかやってないので……」
    ― これから他に夢中になれるものってあると思う?
    「ないと思います、テトリスを超えるものがないので」

    「普通」が何なのかという問いはさておいて、自らが「普通じゃない」と感じてしまっている来し方をどう埋め合わせれば良いのか。「獣道」で縁あって話を聴いた別の十代の方からも同趣のじれったさのようなものを感じたのは偶然ではあるまい。
    いわゆるサクセスや功名心といったものとはまた別の曰く言い難い何か。そういったものを求める気持ちは一見すると淡泊にも思える。しかしそれは見方によってはとても贅沢な欲求でもあるだろう。言葉を尽くそうとしているkazuの姿からふとそんな気持ちになった。

    ウメハラが始めて「ストリートファイター4」をゲームセンターで遊んだ時のことだ。それは彼にとって一度は捨てたつもりの格闘ゲームだった。あらためてそれに触れた時に「得意なことがあるって有り難いものなんだな」と心底感じたという。無用の口出しと思いつつ、ついそんなことをkazuに伝えていた。
    「そういう風に思えるようになりたいです。予感はしてます、そういうきっかけの」
    少しはにかんだような、明るい声だった。

    その後のウメハラの成功はドラマチックなものだが、そんな気付きや思いこそが彼にとっての値打ちだったのではないか。費やされた歳月や感情の量。それが転調して帳尻が合うのなら、偏った来し方だって捨てたものではないだろう。「これだけしかやってない」。そんな最年少ファイターの全力を楽しみにしたい。
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